以前映画祭を提示するにあたりこんな話がありました。
「10分の規定」が応募数を狭めているのでは?という意見です。
ん?ちょっと待てよ?
この考えは、コンテストはなんぞや?という根底の話にもなりますね。
禁則の中で美しいハーモニーを生み出すセンス
私は音楽を作ることを生業にしてきました(大学も作曲を専攻していた)が、
例えば、作曲に欠かせないハーモニーの制作。
そこには、「禁則」という言葉があります。
音楽の基本は、何も自由に好き勝手に音楽を作れば良いということではないんですね。
ハーモニーを作るために必要な理論のことを和声楽とも言いますが、
いくつものルールを知った上で逸脱しないように、至高のハーモニーを目指していくという理論ですね。
我々が普段耳にする音楽の原点は元々、西洋音楽から来ているわけですが、
西洋音楽では、厳格なシステムのもとに音楽が作られています。
連続1度、連続8度、連続5度、並達1度、並達5度、並達8度などなどがそれにあたります。ソ
プラノ、アルト、テノール、バスの4つのパートからなる編成を基本に、それぞれの音符がこういう動きをしたらいけない。といった厳密なルールがあるのです。
作り手はこういった規則(ルール)を理解した上で、規則を守りながら、いかに自分のセンスを発揮したハーモニーを生み出すのか?
ここに、ルールの統制された中での美しさの基本があります。
規定の中で表現するというのは、音楽に限ったことでもないですが、
「どうぞ、はみ出して自由に作ってください?」
では、当然、ひっちゃかめっちゃかになるでしょう?
その他のジャンルにおける規定
仕事で何度か音楽制作を対応した際に知ったことでもありますが、
ただなんとなく見ていたフィギュアスケートですが、実際にその現場に関わってみると驚くほど、厳密に規定や制限があります。
コールされてから何分以内に演技をする、分数規定、その他演技をする前後にも様々な規定が多くあることに驚かされます。
また、弊社が関わることの多い、クラシックバレエ。
コンクールで実際に弊社のスクールの生徒が関わることもありますが(弊社はスクール業なども運営している)、事前に細かい規定があり、当然規定分数も細かく決められています。
通常の作品を、通常よりずっと短い分数で踊る必要があり、そのためには、元音源をアレンジして編集する音楽クリエーターのセンスと、振り付け家のセンスが重要といっても過言ではないわけです。
なぜ10分なのか?短すぎはしないか?
テーマに戻りましょう。当コンテストにおいては10分規定。
それは、私が定めた短編映画において、1作品を腹7分くらいで楽しめる適切な時間と考えているからです。
当日は相当数の作品が上映されます。それにオーディエンス賞なども増設されたわけで、お客様が飽きないように先まで見据えて計画する。これもまた、イベンター、コーディネーターの役割の一つだと思っています。
また短い規定があるからこそ、本来は詰め込みたい、あれもこれもを作品内に詰めることができない。
では、その中で、どこを削ぎ落とし、どこを明確に見せ、起承転結を作っていくのか。
ここに、作り手のセンスが存分に試されます。
もし、コンテストでなければ、ここが自由に誰でも披露できる場であれば、当然15分でも20分でも1時間でも自由に存分に、、と思いますが、これは、コンテスト。ルールは必要です。そして、そのルールができた背景には必ず意図があります。
統制のある中で、センスを発揮する。
そのための時間として、10分ルールを設定しています。
今回のコンテストの目的はもう少し先にある
今回のコンテストの目的は、実はその先にあります。
前回もそうでした。あっと驚く素晴らしいセンスのある作家さんに出会うこと。
今回の特典の1つに、受賞者は、「次回第三回ゲスト出演での作品披露の場の提供や、作品の自由物販など自分の作品をしっかりお客様にお届けする場の提供」もございます。
一回限りの出会いではなく、そこから多くの才能あふれる作家さんと繋がる機会になればなとも思っています。
今後、企画が続くにあたって、いつか短編を抜きにした本気のホラーサスペンス映画祭なども開催できたらおもしろなーと。そのための、人材発掘の場としてもこの映画祭の存在があるわけです。
わかります。私もイベント、舞台、音楽も、時には脚本も、クリエーターとして20年近く作ってきました。
思い入れが強い分、作品にはあれもこれも詰めたい。それも十分わかります。
ですが、縛られたルールだからこそ、箱からはみ出そうともがく作家様のセンスの良し悪しは一目瞭然。良いものを作る方って、どんな状況下にあってもいいものを作るんです。
この企画が良き出会いになることを、そして、皆様の才能や感性を爆発して欲しいと願っています。
永野記
溝の口短編ホラー・サスペンス映画祭2024応募、概要
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